タクミさんのADHDとASDを私はほぼ確信していましたが、診断を受けるために受診することにはためらいがありました。
でも、だましだましの日々にある日唐突に終止符が打たれました。
タクミさんが、私の不倫を疑ったのです。
私に海外出張の予定が入り、不在時のさまざまな算段をしていたときのこと。
タクミさんが「不倫相手と一緒の海外旅行なの?」と言いました。とても軽く。当然のことのように。「明日は雨なの?」くらいに。
衝撃でした。
膝から崩れ落ちるかと思いました。実際崩れ落ちました。崩れ落ちなければ窓から飛び降りていたかもしれません。
私は、タクミさんとの毎日を「日常生活にさまざまなトラブルを抱えるタクミさんを私がフォローする日々」と感じていました。
タクミさんは私の息子ではなくて夫なのに、なぜこんなに日々お世話をしなくてはならないの?
どうして彼はそれを当たり前のように享受しているの?
私はそこに「私はタクミさんを愛しているから、彼を助けたい」という理由をあてはめていました。そしてそれは「私もタクミさんに愛されている」がセットでした。だけどタクミさんは日々の愛情表現をしてくれません。頭によぎる「タクミさんは私を愛しているから一緒にいるのではなくて、単に便利だから一緒にいる」というのをなんとか打ち消していたのに、「不倫なの?」と平然と聞くっていうのはつまり私をまったく愛していないということ。
タクミさんにはタクミさんなりの思考プロセスがありました。
- さくら出張中、家事育児さまざまなタスクが俺担当になるのは面倒だ。
- なぜ面倒なことを俺に押し付けて、さくらは旅行にいくんだろう?(タクミさんは出張の経験がなく、出張を自分の経験で一番近い旅行と同一視)
- 一緒に旅行にいく相手と不倫関係にあるのかも。
- 「不倫する妻」で検索すると、さくらの行動は当てはまる! いつもスマホを見ているし、スマホにロックがかかっている。週末1人でよく出かける!(ここで不倫を確信)
- 俺じゃない男を好きなのか。じゃあ俺がさくらを好きでいる必要はないな。
どうしてこう考えるんだろう? 本当に理解できません。
でも、そのあとタクミさんは、泣き崩れるさくらに「どうしてそんなにひどいことを言うの? 私を愛していないの?」と聞かれても「さくらだって俺を好きじゃないでしょう」としか言わなくなってしまいました。
私は打ちのめされました。
そして、これが発達障害から来る行動なのだとすれば、本やらwebやらから聞きかじった情報で素人なりの対応をしていても、もう無理だ。
私だけの努力では無理だ。私も彼に歩み寄るけど彼も私に歩み寄ってくれなければ無理だ。限界だ。
私は私の知っている人の中で、タクミさんが一番耳を貸しそうな人を捜しました。ボロボロに泣きながら義実家を訪れ、義父に頼んだのです。
「タクミさんを病院に連れていって、発達障害の診断を受けさせてください」
続きます。